もやもや病

もやもや病は、脳の血管が徐々に狭くなり、詰まってしまう病気です。

脳の血管は、脳に酸素と栄養を送る大切な役割を担っています。
もやもや病になると、脳の血管が細くなり、脳への血流が不足しこれを補うために側副血行路が作られます。
この代償では不完全なために、脳虚血が生じたり、破綻による脳出血が生じやすくなります。

好発は10歳以下の小児と30-50歳代の成人です。

小児では脳虚血での発症がほとんどです。一過性の手足の麻痺や言語障害、けいれん等の症状が挙げられます。

特に過呼吸になりやすい行動を取ることで脳虚血が増強され症状が現れることが多いとされています。
過呼吸行動の原因としては、ラーメンを吹き冷ます、リコーダーを吹く、大泣き、走った後などがあります。
また、起床時に頭痛が見られ徐々に軽快するといった症状が見られることも多いです。

成人期では、初発症状は脳出血と脳虚血が半々と言われています。虚血状態で発症する場合には一般の脳梗塞と同様の症状を呈します。
脳出血では、脳内出血、脳室内出血に加え、くも膜下出血が起こることもあります。

通常の方はこのように内頸動脈という太い血管から中大脳動脈、前大脳動脈という血管が出て、脳の大部分を栄養しています。

もやもや病ではこの内頸動脈が狭窄します。

狭窄による脳虚血を補うためモヤモヤとした血管が出現し、脳の血管撮影をすると、
詰まった血管の周りに、細い血管が網の目のように広がっているのが見えます。
この細い血管が、煙が立ち込めているように見えることから、「もやもや病」という名前が付けられました。

ただし、このような血管は非常に脆弱であり、容易に脳梗塞や出血を引き起こす原因となります。
そこで脳梗塞や脳出血予防のために外科的に前大脳動脈領域、中大脳動脈領域に血流補填を行うことでこれらを予防できます。

当院では、もやもや病に対して、脳血流を改善し、症状の進行を抑制するための外科的治療を積極的に行っています。
一般的に行われている中大脳動脈への直接バイパス術に加え、 前大脳動脈へのバイパス術も行っており、
特に小児患者さんの高次機能改善を目指した治療に力を入れています。

特に小児期のもやもや病では、前大脳動脈領域の血流低下が認知機能障害を引き起こすことが示唆されています。
当院では、中大脳動脈に加え、前大脳動脈へのバイパス術を行うことで、広範囲の脳血流改善を図り、
術後の認知機能改善を目指しています。




(前大脳動脈バイパスの効果や知能改善に関わる引用文献)


  • もやもや病に対する前大脳動脈、中大脳動脈領域への直接結構再建とその効果
    URL : https://www.jstage.jst.go.jp/article/scs/36/5/36_5_386/_article/-char/ja/
  • Simultaneous Superficial Temporal Artery to Middle Cerebral or Anterior Cerebral Artery Bypass With Pan-synangiosis for Moyamoya Disease Covering Both Anterior and Middle Cerebral Artery Territories
    URL : https://www.jstage.jst.go.jp/article/nmc/46/9/46_9_462/_article/-char/en
  • Determinants of intellectual outcome after surgical revascularization in pediatric moyamoya disease: a multivariate analysis
    URL : https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15045517/